内容情報
労働裁判例から実務をひも解く形で、会社側の勝因・敗因となった事実認定のポイント、
会社が行った対応(労働時間管理・割増賃金に関する労務管理、証拠収集など)のポイントを解説する。
会社側から見た労務管理のポイントを効率よく押さえることができる。
裁判や裁判例に馴染みのない社会保険労務士や、労働分野に関心のある弁護士にもおすすめの一冊!
初めての事業所に訪問するなどし、就業規則や給与形態を確認したときに、
社長や担当者に対して「裁判になると○○○となる可能性が高いですね」と説明できるための基本的な文献として役立つ。
(「はしがき」より抜粋)
残業代請求事件は、使用者側の主張が認められにくい事件といえるかもしれません。
とある方の言葉を借りれば、使用者側は「サンドバッグ状態」、つまり、
労働者の主張に対して有効な反論ができず、納得できないまま和解を求められ、
そして判決を言い渡されてしまうことが多々あると思われます。
また、社会保険労務士にとっては、著名な判例を除いては、
裁判所の判断自体に触れる機会が少ないものと思われます。
そのため、確立した判例法理(例えば整理解雇の4要素)については知識を有していても、
実際の裁判でどのような判断がされるのか、事実認定レベルの問題点まで踏まえた
労務サービスの提供を行うのは多大な労力を要するものと思われます。
そのため、そのような状況を少しでも改善できればと思い、構成も工夫しました。
その内容の一例を挙げれば、
・どのような資料から労働時間が認定されるのか
・残業の許可制はどのような制度を設定し運用すべきか
・判決で付加金の支払いを命じられたときはどう対処したら良いのか
等の疑問に対する裁判所の判断を掲載し、それらを訴訟活動及び労務管理の実務に
フィードバックしやすい形としています。
筆者は、労働基準監督官として3年間、厚生労働事務官として約4年間、
弁護士として約7年間、労働に関する問題に関わり、多数の経験があるとは言えませんが、
ユニークな事件に巡り会う機会には恵まれました。
例えば、タイムカード(正確には入退館記録)の記載の証明力を否定するために
商品のタグやクレジットカードの使用時刻を確認したり、
労働者の証明に対する間接反証として、他の従業員の労働時間を計測したりと、
訴訟活動への創意工夫は、ベテラン弁護士に劣らないだけの自負があります。
そして、本書執筆のために調査した裁判例をヒントに主張立証を行った結果、
裁判所に肯定的な判断をしてもらったこともあり、読者にとっても、
本書は同様の効果をもたらしてくれるものと期待しています。
そのほか、本書には、筆者の拙い経験談等を内容とするコラムを掲載しており、
実務上の即効性はないかもしれませんが、読者に対し、
通常業務では