みんなで取り組む 社会的緩和ケア/鳥崎哲平

出版社名:南江堂
著者名:鳥崎哲平、福村雄一、柏木秀行
発行年月:2025年07月
キーワード:ミンナ デ トリクム シャカイテキ カンワ ケア、トリサキ,テッペイ、フクムラ,ユウイチ、カシワギ,ヒデユキ
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内容情報
お金や仕事,介護,身寄りに関する社会的問題は,患者・家族にとって時に身体や病状のことよりも悩みの種となる.本書はそのような社会的苦痛に対する緩和ケア(略して「社会的緩和ケア」)を,医療者が現場で実践するための本である.医療者以外の様々な専門職も執筆陣に迎え,1章では実践のための基礎知識,2章では各専門職によるサポート内容,3章ではケースファイルを掲載.社会的緩和ケアの実際を知り,適切な介入と幅広い支援・ケアに繋げられるようになる一冊.

【はじめに(序文)】
「〓たとえ「患者」になったとしても,人は社会の中で生きている〓」
緩和ケアの臨床に携わっていると,患者やその家族から,お金のこと,仕事のこと,介護のこと,死後の手続きのことなどの悩みや気がかりを打ち明けられることがよくあります.患者は病人である以前に,社会の一員として生きてきた一人の人間なのですから,ときには社会的な問題がどんな身体的・精神的な症状よりも患者を悩ませることもあると思います.医療者の立場からしても,金銭的理由による受診控えや医療費の未払い,介護力不足による入院の長期化など,診療行為自体にも大きな影響を与えかねない社会的な問題は軽視できるものではありません.

 しかし,医師や看護師らが社会的問題やその対応について十分な知識を持っていることは稀で,実臨床においては医療ソーシャルワーカー(MSW)などの専門職に対応を任せきりにしてしまいがちなのではないかと思います.ですがMSWもまた,患者の抱える社会的な問題にどう取り組めば良いのか,どこまで踏み込んで良いのか,何をすれば良いのか……そのように悩みながら手探りで対応しているというのが実状ではないでしょうか.

 そのため本書では,多岐にわたる社会的な問題の中でも,医療者が特に経験することが多いと思われる「お金の問題」,「“身寄りがない”という問題」,「介護の問題」の3 つのテーマに絞り,知っておくと役立つ知識や実践例をまとめました.

 まず1 章では,医療者として身につけておきたい社会的緩和ケア(※「社会的苦痛に対する緩和ケア」の略)の基礎知識を解説しています.

 さらに2 章では,医療の枠内だけでは社会的緩和ケアを十分に語ることができないと考え,医療者だけでなく,病院外で働く様々な専門職の皆様にも執筆をお願いしました.

 3 章では,がん治療や救急・集中治療,在宅医療など様々なシチュエーションの症例を通して,社会的緩和ケアの実践をより具体的にイメージできるように,実際の症例をもとにした仮想事例を提示・解説しました.

 医師・看護師・MSW をはじめとした医療者の皆様が社会的緩和ケアに取り組む上で,本書が少しでもお役に立つことを,著者・編者一同,心から祈っております.

2025年6月
編者一同