内容情報
?プロローグより?
早いもので、来年には六十歳を迎えます。以前はテレビに出ている有名人のテロップに「○○さん(六十歳)」と書かれているのを見ると、「もう結構なお歳なのだなあ」と思っていたものですが、自分がその歳になるなんて、ちょっと驚いています(笑)。五十代になる頃に目標としていたのは、祖母のような人になること。働き者の祖母は、長年一緒にいて一度も愚痴や不満を言うのを聞いたことのない、やさしく、そして凛とした人でした。だから私もそうしなくてはと、何事も丁寧に、何事も全力で、と気負っていた気がします。
もうすぐ六十代になろうとしている今は、少し考えが変わってきています。今の私のまま、背伸びしない人でいようと思います。諦めではなくて、なるべくなら焦ったり、戸惑ったりすることなく、六十代を楽しみながら過ごせたらと思うからです。体調や暮らし方、親との関わり方などが少しずつ変わってきて、心地よくいられる基準が、私のなかで変わったのだと思います。
思えば五十代は、六十代の下準備をしていたような時期でした。これまで通りにいかないことも多いから、方法や考え方を変えてみたり、今後も変わらず続けていこうと決めたり。六十代を見据えて変えたことのひとつが、家のしつらえ方。数年前までは見た目よく居心地よくということばかり考えていました。この先は気力も体力も低下することを考えて、少しずつ、安心安全を考えたリフォームやもの選びに移行しています。収納も長年、扉や引き出しを開けるたびに気分が上がるよう整えてきましたが、今は仕分けも入れ方もざっくり。この箱の中のどこかにある、くらいの収納のほうが、家族で使いやすいこともわかりました。若い頃は整理整頓された収納にこだわりがあって、私自身これは一生続けていくだろうと思っていたので、靴下がぐしゃっと入っているのが当たり前になった夫の引き出しの様子を見ていると、面白く感じて笑みがこぼれます。
一方、ずっと変わらないこともあります。それは、家族と幸せに暮らすこと。これが私の軸になっていて、何があっても変わらない目標です。ちょっと心が沈む日や、もやもやする日もあるけれど、夫と愛猫と私がいつも笑顔で元気に暮らせていたら、それだけでいいと思うのです。
この本では、六十代を迎えるにあたっての下準備をしている私の日常を書き留めました。人生後半は、頑張り過ぎず、なるべく気楽に、前向きに、そして機嫌よく。いつも笑って毎日を送れるよう、心の備えをしておきたいと思っています。この本を手に取ってくださった皆さまの毎日も、幸せな笑みで溢れますように。