内容情報
東京商工リサーチによると、2023年度の医療機関全体の休廃業・解散件数は、前年度比37.1%増となる709件となりました。このうち、病院より小規模なクリニックが580件と、2019年度の561件を上回り過去最多となっています。
医療機関にとって苦しい経営環境が続く中、比較的軽症者が多く診療報酬の高い治療を行う機会が少ない耳鼻咽喉科や小児科などはさらに逼迫した状況に陥っています。日本全体で人口減少が進み患者の奪い合いが激化するなか、競争に勝つために設備投資をして提供する医療の質を高めようとしても、こうした診療科では採算をとっていくことが容易ではありません。
そんな中、本書の著者は2002年に都内でクリニックを開院したのを皮切りに、東京と神奈川を中心に耳鼻咽喉科や小児科のクリニックを展開し、現在は全17カ所のほとんどの施設で黒字化を達成しています。その成功の鍵となったのは、拠点となる収益性の高い手術治療専門施設(サージクリニック)を設置し、その周辺に複数のクリニックを配置して集患を図る「クリニック・ドミナント戦略」です。特定の地域に集中的に出店して優位性を得る戦略はコンビニエンスストアなどでよくみられる手法ですが、著者はこれをクリニック経営に応用し、低単価・低収益の代表格ともいえる診療科でも安定した収益を上げられる仕組みを確立しました。
本書では、著者が実践するクリニック・ドミナント戦略とは何か分かりやすく解説し、この戦略に基づいた実践的な開業計画や設備投資、人材マネジメントなどを具体的に紹介しています。地域医療に貢献しながらも厳しい経営が続いている開業医にとって新たな経営手法を指し示す1冊です。