会社は社員を二度殺す/今野晴貴

出版社名:文藝春秋
著者名:今野晴貴
シリーズ名:文春新書
発行年月:2025年06月
キーワード:カイシャ ワ シャイン オ ニド コロス、コンノ,ハルキ
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内容情報
2014年に過労死防止法が制定され、「働き方改革」が叫ばれるなかでも後を絶たない日本の過労死。しかもそれは一部のブラック企業のみならず、電通、トヨタ、三菱電機、NHKといった有名大企業内でも繰り返し起き、まったく同じ部署で二度目が発生したケースも存在する。
「働き方改革」が労働強化と自己責任化を迫り、AI/テクノロジーの伸展が過労うつや自死を加速させる逆説。労災の賠償金が企業内でコスト化され、その減額を争う訴訟では「命の値段」の差別化が進むディストピア的風潮も生んでいる。そのほか近年急増している「発達障害いじめ」や「ハラスメントうつ」事案など、過労死のすそ野は多様化の様相を呈する。
そして不幸にして過労死に至ったケースでも、その門前には遺族が労災申請しなければ、「何も起こっていないのと同じ」という”親告罪”的ハードルが立ちはだかる。残業が月100時間を超えていた証拠があっても、会社を告発する痛切な遺書が残されていようとも、労基署がみずから調査にやって来ることはない。また、たとえ申請が通って労災を認められても、会社を民事で訴えて勝たない限り会社が直接のペナルティを受けることもない。しかもその法廷では賠償額を極小化したい会社側により、徹底的に故人の過失や脆弱性が挙げつらわれ、同僚への箝口令、証拠隠しは勿論、失恋や家庭内の問題といった個人的理由をでっち上げるなど、遺族のメンタルまで破壊される地獄が待つ。
会社のために働き命を落とした故人に対し、豹変した会社が遺族におこなう故人への徹底的な侮辱と攻撃。ベストセラー『ブラック企業』以降の著作で企業の「使い潰し」労務管理を告発してきた著者が、過労死遺族からしばしば聞いてきた「私の夫は二度殺されました」という言葉。その言葉が意味する非情な実態を、多くの過労死事例とその後の訴訟経過をあわせルポする。
【目次】
序章 なぜ、過労死がなくならないのか?
第1章 過労死の「その後」 企業はあなたの名誉を守らない
【事例(1) 会社を偽装解散させた企業】
【事例(2) 存在しない「失恋」を法廷で主張した青果卸売企業パワハラ自死の事例】
第2章 事実を隠ぺいし、過労死を繰り返した企業
【事例(3) 過労死は「不祥事ではない」としたNHK】
【事例(4) 日立造船 海外赴任先の自死を「事故」としての処理を主張】
第3章 過労死防止対策と対立する企業の「コスト計算」
第4章 会社は社員を「二度」殺す 遺族と会社の攻防
【(1)証拠集めの妨害】
【(2)事実の歪曲・捏造】
【(3)遺族への責任転嫁】
第5章 資本主義経済と「命の値段」 過労死と優生思想のつながりとは?
第6章 「特攻作戦」から変わらない日本社会
第7章 AI・プラットフォーム・「自由な労働」が過労死を広げるディストピア
終章 会社に「二度」殺されない社会のために