内容情報
◆創作
宮内悠介 「ラウリ・クースクを探して」
1977年、バルト三国のエストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があったラウリは、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だが時代は大きくうねりソ連は崩壊。その才能の煌めきによって人々の記憶に深く残り続けているラウリは消息不明となっていた。
歴史に翻弄された一人の人物を描く、かけがえのない物語。一挙掲載300枚。
長井短 「私は元気がありません」
丸まった背中は分厚くなって、迎え酒も平気だった腎臓はどんどん弱っている。それでも、私たちは何度も同じ夜をなぞり続ける。16年9カ月の歳月は、あの最高だった私たちを忘れさせてしまうから。生きてゆくことのしんどさに等身大で向き合った、最新中編。
◆新連載
早見和真「問題。――以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい」
長谷川十和は小学6年生。中学受験を控え、塾の空気も変化するなか、十和はなかなか本気になれない。家族は応援してくれている。十和もがんばりたいとは思っている。そんな自分の心の内を伝えられるのは“あの人”だけだ。これは新しい中学受験の物語。そして普遍的な家族の物語。
◆連作
川上弘美「二人の夜」中編
◆評論
柳楽馨「笑うに笑えない魚たちの寓話」――屋敷葉「いっそ幻聴が聞けたら」を読む
◆インタビュー
大前粟生「不安定へと向かう時代のなかで」