発明者:岡野 戸仁子 テレビを点け椅子に座り眠りかけていた。白い帽子と白い服を着た人が奇妙な動きをするので、意識が戻った。調理師の右腕がレ点を描いたからだが、大きな泡だて器で何をしている?普通は、攪拌でしょ? テーブル上には大きなトレイ、中に味噌。 「味噌は泡だて器でトレルのだあ!」 泡だて器の交差している先端を避けて、一番太い角のワイヤーが平行に並んだ箇所でとっている。 既に立ち上がっていた。手持ちの泡だて器のワイヤーをプツプツと五回切った。ワイヤーは曲がり癖がついていて、思うように平行には並べられないので、アトランダムというべきか、めちゃくちゃというべきか。無理やり紐でワイヤーの根元を結んだ。それでも味噌はくっついた。 「味噌ならクッツクのだあ!」 わが手で曲げられる程度のワイヤーを買って平行に並べた。するとワイヤーの林の中に一つの空間ができ、くるり回せば、その空間に味噌が鎮座したのだ。 「味噌はチンザするのだあ!」 平行だけではなく放射線状に並べ替えた図面も特許申請書に加えた。コンクールで入賞し、それをテレビ局が取り上げてくれたのでビデオを撮り、一度は断られていたS企業に送った。採用となった。S企業からは、丁寧で誠実な優しい断り方をされていたので、気持ちが傷つかないので再アタックしたのだ。 開発企業をやはりプロだなと思ったのは、ワイヤーの曲げ方について、自分が作ったのはただのループでしかなかったが、容器の角部からも味噌が取れるように、ワイヤーを腕を張ったような角張った曲げ方にしていたこと。また「実験したら、この器具の機能はむしろマッシャーだね」と教えられたことだ。 |