記憶を語る,歴史を書く: オーラルヒストリーと社会調査 (単行本)

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【商品概要】


【商品説明】
市井の人の証言は,歴史的な資料(史料)としてどのような意味で信頼に足るのか。社会科学が各国・各領域で続けてきた諸論争をフォロー,膨大な学的蓄積と著者自身の実践を通してオーラルヒストリー/口述史を捉え直し,方法論として説明可能なかたちで位置づける。
■目次
●序章?オーラルヒストリーを研究する
1?本書の目的と対象
2?記憶と歴史と社会学
3?「主観性」と相互行為
4?本書の構成
●第1章?オーラルヒストリーという営み
1?オーラルヒストリー研究の広がり
2?地域ごとの展開
3?3つの類型
4?口述の歴史に込められたもの
●第2章?幻の「転回」:方法論の変化に関する諸言説
1?オーラルヒストリーの「転回」
2?「主観性」という問題の浮上
3?「主観性」で意味されていたもの
4?結論


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【商品説明】
市井の人の証言は,歴史的な資料(史料)としてどのような意味で信頼に足るのか。社会科学が各国・各領域で続けてきた諸論争をフォロー,膨大な学的蓄積と著者自身の実践を通してオーラルヒストリー/口述史を捉え直し,方法論として説明可能なかたちで位置づける。
■目次
●序章?オーラルヒストリーを研究する
1?本書の目的と対象
2?記憶と歴史と社会学
3?「主観性」と相互行為
4?本書の構成
●第1章?オーラルヒストリーという営み
1?オーラルヒストリー研究の広がり
2?地域ごとの展開
3?3つの類型
4?口述の歴史に込められたもの
●第2章?幻の「転回」:方法論の変化に関する諸言説
1?オーラルヒストリーの「転回」
2?「主観性」という問題の浮上
3?「主観性」で意味されていたもの
4?結論
●第3章?内容と方法:オーラルヒストリーと相互行為
1?社会学とオーラルヒストリー
2?各国での議論
3?「科学的」なるものへの問い
4?結論
●第4章?事実がわからないとき:過去の記述と社会調査
1?相互行為と回想における「主観性」の問題
2?Just?one?witness?
3?「吹田事件」と「吹田・枚方事件」
4?「吹田事件」の意味
5?結論
●第5章?過去が問われるとき:旧日本軍性奴隷問題をめぐる証言の聞き方について
1?本章の位置づけ
2?調査方法
3?真偽が問題になる条件
4?聞くための条件
5?共通の土台
6?結論
●終章?オーラルヒストリーで社会学する

■序章の冒頭より抜粋
?2007年の秋,当時学部4年生だった私は,卒業論文が書けなくて困っていた。私の手元には,伯父と伯母のインタビューデータの文字起こしがあった。彼らは在日コリアン1世で,1930年代後半に日本へ移住したり日本で生まれたりして,1945年に現在の大韓民国にある済州島へ引き揚げ,1940年代末にふたたび日本へ移住した。私は彼らの幼少期の思い出や済州島での生活,日本への再移住プロセスや日本での学校・就労・結婚生活などについてインタビューし,それを社会学辞典に載っているような用語で分析し,在日1世の階層移動やジェンダー意識,民族的アイデンティティについて書こうと思っていた。
?それで私は,自分が行ったインタビューデータの文字起こしから,そのような「社会学的」概念に当てはまりそうな箇所を抜粋し,「階層移動」「ジェンダー規範」「民族的アイデンティティ」という言葉を使って再記述してみた。文字起こしのなかには貧困についてのエピソードや,日本,韓国という国家名,民族教育の存在について述べた箇所,あるいは家庭内での役割分業を示唆する発言や女児の教育機会についての言明が複数あった。
?また当時,私はごくわずかではあったが,解放直後の朝鮮半島の歴史や戦後の日本における在日コリアンの歴史について知らないわけではなかった。その年の春先に大学院に進学しようと思い立ったので,社会学的な用語を勉強しなければならないとは思っていた。だから,彼らの個人史に登場する歴史的事件の名称や社会学的な概念をまったく知らないというわけではなかった。そして私は,社会変動や階層移動,あるいは近代化といった抽象的な「マクロ」な事柄を,「ミクロ」な個別の資料のなかに見出すのが社会学的なものの見方だと思っていたので,個人が人生を回顧したトランスクリプトを歴史的事件の名称や社会学用語で再記述すれば,ミクロとマクロをつなげることができるはずだと思っていた。
?ところが,先行研究を引用し,歴史的事件や社会学用語によって体験談を再記述したものは,私がすでにある程度まで知っていたことを,新たな具体例を引いて書き直したものでしかなかった。そうやって再記述した3人の生活史には,なんの新奇性もおもしろさもなかった。私はインタビューを聞いたときにあんなにワクワクしていたはずなのに,書き上がったものは社会学用語辞典のいくつかの項目の例を増やしたにすぎなかった。私が書きたいのはこういうものだっただろうか。私は,インタビューで聞いたことを辞典の項目の新たな1例にしたいわけではないのに,なぜそのようなものを書いてしまったのだろうと思い,しかし他にどうしたらいいかわからず,卒業論文でインタビューを使うのをやめた。結局,卒業論文の出来は惨憺たるものだった。
?私は彼らのインタビューのどこを,どのように分析すればよかったのだろうか。過去に起きたことを本当だとわかるためには,何が必要なのだろうか。いろいろな理由で本人が文字に残せない体験談を誰かが残す作業の特徴とはなんだろうか。誰かの過去の体験談から社会学的な??言い換えれば,社会学以外の学問分野では書けないことについて??論文を書くためには,何について考える必要があるだろうか。大学院に進学したあと,私はこういった問題について考えなければならなくなった。私は不勉強なうえに勤勉でもないので,長いあいだこの問いに答えが出せなかった。結局わかったのは,この問題はどうやら,私が当初思っていたほどには簡単に答えが出せそうな問題ではないということだ。
?本書は,15年前の私が答えられず,かといって投げ出すこともできなかった問題に,答えようとしたものだ。私の無知と怠惰のため,一時的にでも納得のいく答えを出すのは,あのとき思っていたより難しかった。そして,結果として出た暫定的な答えは,画期的でも知的興奮を呼び起こすものでもない。しかし何も調べなかったときよりはましだろうと思いたい。

【商品詳細】
ブランド:有斐閣
商品名:記憶を語る,歴史を書く: オーラルヒストリーと社会調査 (単行本)
製造元:有斐閣

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