スタートは、「ウイスキーらしさ」からの脱却。
思いのままに挑んだ、新しいブレンデッド・モルト。
プレンドに取り組む前に、プレンダーは、ふと考えた。 新しいウイスキーをつくる、ということが 今までにないおいしさをつくることであるのなら、 まずは「 ウイスキー かくあるべし」という固定観念を捨て去るべきではないか。 視野を狭くするような約束事は、一度きれいに忘れてしまおう。 ルールは、ふたつだけ。 誰でも気負いなく楽しめるウイスキーであること。 かと言って、ただ飲みやすいだけではない、 古くからのウイスキーファンを虜にするほどおいしいウイスキーであること。 あえてグレーンを使わないブレンデッド・モルトで、やってみよう。 これが、チャレンジの始まりだった。
心地よい音楽のようなウイスキーをつくるために。
スコットランドと日本から、モルトを選ぶ。
ブレンダー がイメージしたのは、音楽。 凄腕のアーティストたちによるセッション。 類まれな才能と技術を持つ演奏家たちが、それぞれ持ち味を発揮しながら 肩の力を抜いて遊ぶように、心地よいサウンドを展開する。
そんなウイスキーは、できないだろうか。 プレンダーは試みを重ね、 スコットランドのモルトと日本のモルトの組み合わせにヒントを見出した。 ハイランドで育まれた、フルーティーでかろやかなベン・ネヴィスや、 華やかな香りを咲かせるスコティッシュモルトの数々。 そして、ふくよかな宮城峡モルトと、力強い余市モルト。 個性豊かなモルトたちが出会い、圧巻のパフォーマンスが始まった。
スコティッシュのメロディーと、ジャパニーズのリズム。
華やかに始まり、かろやかに広がり、引き締まった余韻を残す。
イントロは、明るく華やかに弾むフルーティーな香り。 つづいて、熟成を重ねてクリーミーななめらかさを身につけたスコティッシュモルトが バニラのような香りを漂わせながら、甘いメロディーを繰り広げる。 ベースに流れるのは、おだやかな宮城峡モルト。 ゆるやかにうねるリズムで、個性的なスコティッシュの音色をまとめあげる。 エンディングは、ややビターに。 ベビーピートの余市モルトが、わずかに緊張感漂う余韻となって、静かにつづく。 複雑で重層的なのに、思わず微笑んでしまうようなおいしさ。 これが、ニッカウヰスキーのセッション。 ブレンダーの想いがつくった新しい音楽が、飲む人を心地よく引き込んでいく。