銀河を渡る 全エッセイ

すべてのファンへ捧ぐ――。 好奇心を全開に「旅」し続けた25年間を束ねる、全エッセイ。 『深夜特急』の終わりで迷った末に訪れなかった「夢の都市」マラケシュへの旅、 『一瞬の夏』から始まった新たな「物語」を生きる若きボクサーへの夢、 「深い海の底に」旅立った高倉健へ贈る最後のメッセージ。 夢を生き、物語を書く。 『檀』『凍』から『キャパの十字架』までの25年間。 ……だが、二十五年という、そう短くはないこの年月の中で、変わらなかったことがひとつ ある。それは、私が常に移動を繰り返してきたということだ。ここではないどこかを 求めて、というほど初々しくはないにしても、こことは異なるどこかへ行きたい、と いう好奇心が消え失せたことはなかった。それが私に繰り返し繰り返し海を渡らせた。 こことは異なるどこかへの旅をしても、やはりしばらくすればここに戻ってくる。しかし、 それは、ここが離れがたい宿命の土地と感じられているからではなかった。どこか に行き、ここに戻ってくるたびに、ほっとするということはある。しかし、同時に、 ここが、他のどこかとほとんど等価になっていくような感覚が生まれてくるのを