■iCAN Phantom■
フルバランス・アナログ・ヘッドフォンアンプ兼プリアンプ
▼iCAN Phantom の製品特長
・世界をリードするハイファイ・ヘッドフォン周辺機器メーカーiFi Audio の究極のアナログ・ヘッドフォンアンプ
・ハイエンドのステレオ・プリアンプとしても使用できるので、パワーアンプやスピーカーに接続可能
・PureWave PRO のフル・ディファレンシャル・バランス回路設計が超低歪みを実現。
・ソリッドステート・ステージと GE5670 真空管ステージをリアルタイムで切り替えることのできる、2 つのディスクリート入力ステージ
・15,000mW の驚異のパワーが、最高に負荷の高いヘッドフォンも易々とドライブ。
・アンバランス・モードで 14V、バランス・モードで 27V
・ゲインと負荷インピーダンスをそれぞれ調節可能。さらに出力アッテネーターiEMatchにより、あらゆるヘッドフォンと IEM(インイヤーモニター)のインピーダンスに適合
・静電型ヘッドフォン用の 6 つの電圧設定を装備した Pro iESL エナジャイザー・テクノロジーを搭載
・キャパシティブ・バッテリー電源が、家庭用電源に起因するノイズをオーディオ信号から除去
・ヘッドフォン用とスピーカー用のマルチレベルの XSpace 及び XBass アナログ処理モード
・模範的で上質なつくり、幅広い接続性、情報量の豊かな TFT カラー液晶を採用
・iFi が誇るフラッグシップ電源、iPower Elite、アルミニウム製リモコン付属
▼真空管かそれともソリッドステートか ? 2 つの入力ステージの話
この製品の前に発売された Pro iCAN と同じように、iCAN Phantom はいくつかの独自の特徴を贅沢に備えており、これが他のヘッドフォン・アンプとの差別化を実現しています。そういった機能のひとつが、2 つの入力ステージを装備している点です。ひとつは真空管ベース、もうひとつはソリッドステートで、これによってユーザーはこれら 2 つをリアルタイムで切り替えることができるのです。これらの入力ステージは、完全に切り離されて独立しているので、信号経路が複雑になる(たとえば、ひとつの回路の中で真空管のスイッチを入れたり切ったりする)ようなことはなく、信号を最短で直接伝送することで最高の純度を保つことができます。
フル・ディスクリート A 級ソリッドステート入力ステージは J-FET を使用し、真空管のみによる A 級回路は、手作業で選定してコンピューターでマッチングした General Electric5670 真空管(6922 のプレミアム型)を使用しています。この真空管ステージでは、2 つのモードを選択することができます ? 「Tube」と「Tube+」です。「Tube+」の方は、全体のループゲインを最小限におこなうことでネガティブ・フィードバックが最小になり、真空管の自然な高調波とトランジェント・パフォーマンスのトレードオフを選択することが可能になります。実質的に、ひとつの筐体に 3 つのアンプが収納されているようなもので、それぞれが異なったサウンドを提供してくれるということです。
真空管とソリッドステートのサウンドの違いを、リアルタイムで比較できるのは確かに楽しいことですが、これら 2 つの入力ステージを個別に搭載しているのは、ただのまやかしなどでは決してありません。ソース機器が様々で、音楽スタイルが多様で、利用できるヘッドフォンやスピーカーのタイプが豊富にあるということは、これらの回路のそれぞれが独自の存在理由を持ち、時によっては選ばれ方も異なる可能性があるということです。たとえば、ソリッドステート・ステージは軽快さと直接感を実現し、真空管モードはなめらかさと自由に呼吸するようなダイナミックな特質を実現してくれます。そして、「Tube+」は真空管の音の影響を強調して、たとえばアコースティックな音楽スタイルやヴォーカル・スタイルに合うような、魅力的でロマンティックな温かさを生み出すのです。
搭載されている GE5670 真空管は、10 万時間の寿命を持っています。それを取り替えることになった場合にも、iCAN Phantom のガラス天板は簡単に取り外すことができ、交換が容易になります。
▼PureWavePRO ? レファレンス・クラスのフル・バランス回路設計が最高に純粋なサウン
ドを生み出す
バランス回路設計は、長年にわたって、ハイエンド・アンプ設計において優れたオーディオ性能を生み出すための正しい道筋となっています。しかし、この「バランス」という単語は様々な形で使われ、常に同じものを意味するとは限りません。iCAN Phantom は、バランス回路設計を究極の形で使っています ? 入力から出力までフル・ディファレンシャルになっており、これが信号経路におけるノイズとクロストークを最小に抑え、究極の純粋なサウンドを実現するのです。
基本的に、「フル・ディファレンシャル」回路設計 ? あるいは iFi の呼び方によれば「トゥルー・ディファレンシャル・バランス」 ? は、各チャンネル(左と右)が回路設計中で完全に切り離されていることを意味し、これらのチャンネルのそれぞれが、同レベルではあるが位相が正反対(+と−)の 2 つの個別の信号を持っているということです。これを実現するには、個別のアンプ回路が必要になります。左チャンネルに 2 つ、右チャンネルに 2 つ? これは、シングルエンド回路設計よりもずっとコストがかかり、複雑になりますが、得られるサウンドは莫大な価値があります。
iCAN Phantom の「トゥルー・ディファレンシャル・バランス」回路は、6 つのデッキでボリューム・コントロールと組み合わせています ? 各チャンネル(+と−)に 2 デッキが使用され、残りの 2 デッキはボリューム・コントロールの動作をモニターするのに使用されます。モーター駆動されるボリューム・コントロール・ポテンショメーターは、日本の ALPS電気(現アルプスアルパイン)特製で、並外れた品質を持っています。
ボリューム・コントロールの両側(+と−)と増幅回路の両側(+と−)が「差動」するので、実質的にはそれらはシングル・ステージになります。したがって、回路は入念に作り込まれていても、ヘッドフォン・アンプとしては可能な限り最高にシンプルな設計にまで「煮詰められて」いるです。
iFi は長年にわたってバランス回路を支持しており、現行の各種アンプの多くの、どの価格帯においても、バランス回路の原理を取り入れています。2020 年からは、iFi の最先端のバランス回路コンセプトはすべて「PureWave」と名付けており、並外れたリニアリティと微小なほどの低ノイズと低歪みによって達成することのできた純粋なサウンドを意味するようになっています。iCAN Phantom の「トゥルー・ディファレンシャル・バランス」回路設計は、最高品質の電子部品を使っており、この原理の究極を表現としています ? だからこそ iFiは、それを「PureWave PRO」と呼んでいるのです。
▼iESL テクノロジー ? エレクトロスタティック・ヘッドフォンのために、そしてさらに…
大半のヘッドフォンは、ダイナミック型ドライバー(あるいはムーヴィング・コイル型ドライバー)を使ってサウンドを生み出します。プレーナー型のマグネティック・ダイアフラムを使っているものも少数あり、これは形状も動作も異なっているのですが、それでも、動きを生み出すのに磁場を使っている点は同じです。ところが、ヘッドフォン・シーンのハイエンドの領域には、珍しくはあってもすばらしいサウンドを生み出すドライバーのタイプがあります。それはエレクトロスタティック型ヘッドフォンです。これらのヘッドフォンは、帯電した薄い振動板を、2 枚の伝導プレートあるいは電極の間に配置した形になっています。ダイナミック・ヘッドフォンやプレーナー・ヘッドフォンは低域のレスポンスが強くなる傾向にありますが、最高品質のエレクトロスタティック設計によるオープンなサウンドステージと魅惑的な高域に勝るものは皆無です。
しかし、多くのヘッドフォン・ユーザーにとって、重要な欠点があります。それは、エレクトロスタティック型ドライバーのインピーダンスが極端に高いので、他のヘッドフォン・タイプよりもオーディオ信号の電圧をはるかに高く上げるために特別なアンプが必要になり、さらに、信号の電流は安全なレベルに落とさなければならないという点です。これを実現するひとつの方法は、エレクトロスタティック「エナジャイザー(エネルギー供給源)」と呼ばれる別のユニットを通常のアンプに追加することです。これが、iFi が以前の世代の Pro シリーズに用いていたアプローチで、これには Pro iCAN ヘッドフォン・アンプに Pro iESL エナジャイザーを追加するオプションが必要とされたのです。
iFi は、その iESL エナジャイザーのテクノロジーを iCAN Phantom に組み込むことを選択し、これによってすべてのヘッドフォン・タイプにあたりまえのように対応した単一のアンプを作ったのです。しかし、この努力の恩恵を得るのは、エレクトロスタティック・ヘッドフォンのオーナーだけではありません ? エレクトロスタティック・ヘッドフォンからこういった高いパフォーマンスを生み出すのに必要とされるパーツの品質と、巧妙な回路設計によって、他のタイプのヘッドフォンに対するこのアンプのパフォーマンスも、併せて向上しているのです。
トランスの品質は、音質にとってきわめて重要です。iCAN Phantom が特製の PPCT(ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランス)を組み込んでいるのは、それが理由です。これには、GOSS(Grain Oriented Silicone Steel 粒子配向ケイ素鋼)と Mu-Metal(ミューメタル)のハイブリッド・コアを用い、きわめて細いワイヤーをきわめて精確に手巻きして、垂直セクション及び水平セクションに複雑なマルチセクションの巻き方を行う方法を採用しています。このトランスによって、並外れた広帯域、超低歪み、完璧なリニアリティが可能になるのです。
入力から出力まで、回路のあらゆる細部への気配りは極端なほどです。たとえば、金メッキが施された銀製の接触リレイは、内部にガスが充填されており、長期にわたって完璧なパフォーマンスを確保します。また、入念に設計された半導体は、金メッキされた銅ケースに収められることでシールドされ、一貫した、歪みのないサウンドを生み出すのです。