オリヒメ IPA クラフトビール 355ml 1本 -ORIHIME India Pale Ale- 石井ブルーイング

Medium malt character with rich hop aroma and crisp hop flavor!
惜しみなく使われたホップの苦味と香りがたまらない!

Malts; Pale Ale, C-15,
Hops; US Magnum, Centennial, Citra, Falconer’s Flight 7C
Yeast; WLP 001(California Ale Y)
6.5%ABV, IBU 66, EBC 16




グアムで起業した前身のISHII BREWING COMPANY。何を意図したわけでもないのですが、
会社設立日は平成22年2月22日と、偶然にも見事な2並びとなりました。

そこからビール醸造のライセンス取得までには7か月弱かかったのですが、ともあれ毎年2月22日には、
創立記念日ということでちょっとしたお祝いディナーに出かけるのがお決まりとなっていました。

2018年の2月22日も、いつものように食事をして帰宅。自宅アパートの駐車場に車を停めて降りたら、
横の植栽にほぼ真っ白の子猫が。おそらく生まれて数か月、耳と尻尾が薄い茶色でシャム猫のように見えます。
以前から、アパートの敷地内には様々な野良猫がうろうろしていて、寄ってくる猫は時折構ってやったりしていたので、
その時もあら新参者ね、可愛いね、程度ではあったのですが、その日が創立記念日のみならず、
にゃんにゃんにゃんの猫の日だったこともあり、突然我々の前に現れたこの猫ちゃんに、何かちょっと運命のようなものを感じていたのも事実でした。

その子猫はアパートの中庭を拠点と決めたらしく、以来ほぼ毎日見かけることに。
撫でたり話しかけたりして可愛がっていたら、だんだんと調子づいて、2階の我々の部屋の前までやって来るようになりました。
はじめはおそるおそる、そのうち窓枠に飛び乗ったり、家の中まで入って来ようかという勢いです。
あまりの可愛さに食べ物を与えたりしながらも、もともと犬派というのもあって、“飼っちゃおうか”という決断まではできずにいました。

それから程なくしたある日、私が夕方帰宅すると、何とこの猫が家の中で弱々しそうにタオルの上で寝ているではありませんか。
たまたま醸造が休みで家にいた夫によると、けたたましい猫の鳴き声の後、
この猫が助けを求めてうちの前までやってきたとのこと。けがをしているので、とにかく家に入れて寝かせてやっているのだというのです。
どうやら、アパート内の別の家で飼われている猫の餌を食べようとして、その猫にひどく引っかかれたようです。

さすがに傷ついた猫を外に放り出すわけにもいかず、とりあえず安全な家の中で様子を見ることにしました。
傷はかなり深そうだし、前足も脱臼したように外れて、ひきずりながら歩いています。
可哀そうに、この子はもう一生Disabledだね、と何ともいたたまれない気持ちになり、
あまりひどいようなら動物病院に連れて行かないと、と思いながら、その夜を過ごしました。
実は、今となっては、その時の詳しい状況をあまり思い出せないのです。傷がどんな状態だったのか、何を食べさせたのか。
しかし、翌日動物病院に連れていかなくて済んだほど、小さな命が驚異的な回復力を見せたのは確かです。
外れた前足もいつの間にか元に戻り、普通に歩きだしたのです。どんなにほっとしたことか。

会社の創立記念日かつ猫の日に、突如私たちの前に現れた美しい碧い眼の子猫。
そして、ケガをして真っ先に助けを求めてきたのが、他の誰でもなく私たち。
これはもう、うちに来るべくしてやってきた”運命のお姫様“以外の何者でもない(そう、メス猫だったんです)、
と私たちが勝手に思い込むのも無理はないと思いませんか(笑)!

その日から”姫“はうちの子になりました。



以来、姫は私たちの生活の中心になりました。そして、創立記念日に現れた猫なんだから、
と創っていたビール“MINAGOF”のマスコットに任命、時々フェイスブックに登場してもらいました。
新しいビールのブランドを立ち上げる時には、ロゴデザインのメインはぜひとも姫に、とこの頃から心に決めていました。

それから2年、まさかのコロナ禍で観光客が消えたグアムでのビジネスを諦め、私たちは夫の故郷である栃木県足利市に戻り、
Craft Beer醸造を再開することを決意しました。姫を飼い始めた時には全く想定していなかった事態。
しかも、姫を日本に連れて帰ろうにも、コロナの影響で日本へのペットの輸送手段が全て断たれてしまい、途方に暮れる状況に。

しかし、姫をグアムに置いてくると言う選択肢は私たちの中には一ミリも存在しませんでした。
ビジネスも個人的なものも全て引き払い、とりあえず2021年3月、夫だけ先行して帰国してもらい、
私は姫と一緒にペットOKの民泊に移って、手段ができたらすぐに帰国できるように備えながらグアムに残りました。

この時の苦労話はまた別の機会にご披露したいのですが、なにはともあれ半年後の2021年9月、
ソウル経由の大韓航空便という姫にとっては大冒険の末、無事日本に帰国することができました。
さあいよいよ日本での醸造再開、つまり新しいブランドの立ち上げです。メインのロゴデザインのセンターは姫。
でもせっかくの足利市発(初)のCraft Beerなら、足利色もほんのり醸し出したい。。。

そんな時、足利の人なら誰もが知っている、由来も響きも素敵なこの名称を、無視できるはずがありません。
しかも、まさに“姫”そのものが含まれています。
あたらしいブランド名は”ORIHIME”。そう決めるのに、それほど時間はかかりませんでした。

実際のロゴデザインについては、“猫の姫”と“ORIHIMEを思わせる何か”を融合したデザイン、
しかも猫はただの猫ではなくて”姫“という条件で、Unripe Creative Studio のデザイナー、相馬麻耶さんにデザインしていただきました。
コンセプトは「メイン部分は姫ちゃんにとことん寄せつつ、強弱を抑えたシンボルへとアレンジ。
ORIHIMEの和と現代のポップな雰囲気を調和させました。永く愛されるデザインを目指し、全体を可愛らしく、
そしてスタイリッシュに仕上げました。」とのこと。
姫の特徴をよく捉えつつ遊び心のあるデザインで、とても気に入っています。

こんな深い思い入れのあるORIHIMEが、夫の創る渾身のCraft Beerを代表するブランドとなり、
皆様に親しんでいただけるようになる日が一日も早く来ることを、切に願います。

石井 有樹子