

「創作版画」とは画家が自ら絵を描き、版を彫り、摺るという、版画におけるすべての工程を自分自身の手でおこなう「自画・自刻・自摺」によって制作された作品のことを指します。
創作版画は1904(明治37)年に山本鼎が文芸誌『明星』に発表した《漁夫》という木版から始まりました。
当時、「版」を用いた絵といえば江戸時代から続く浮世絵版画がありましたが、これは絵師・彫師・摺師による分業制でした。また、この頃はまだ木版や銅版、石版は印刷技術として活用されていました。
そんな時代だったからこそ、「自分で絵を描き、版を彫り、摺って制作した作品」は、新しい美術の考え方として一大ムーヴメントを巻き起こし、明治末期から昭和にかけて、多くの創作版画家が生まれました。
「わだばゴッホになる」の言葉で知られ、国内外で様々な賞を受賞した棟方志功もこうした創作版画家のひとりです。
本特集ではこうした創作版画の歴史の中でも、特に優れた仕事を残しながらも見過ごされ、あるいは忘れ去られていた「知られざる版画家」について紹介します。紹介作家は南薫造、富本憲吉、戸張孤雁、小泉癸巳男、硲伊之助、川西英、藤牧義夫、初山滋、笹島喜平の9名です。
その他にも、アメリカに渡って伝統的木版画家として活躍する篠原奎次、リトグラフで明るく不可思議な都市風景を描く田中栄子、世田谷美術館で4月14日まで開催中の「田沼武能写真展 東京わが残像1948-1964」を紹介する記事もございます。
3月から5月までの版画展スケジュールは、是非ともギャラリーをめぐるおともに。
見どころの展覧会を作品とテキストで紹介する記事も充実しています。
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