宮本常一の文章には古い言葉、難しい言い回しが多く、現代人が読み込むにはかなりの知識と根気が要る。
「宮本常一ふるさと選書」は、小学校高学年から読めることを意識して編集した。そうすれば大人も読めるものになる。一部表記を改め、漢字にルビ、難しい用語に解説をつけ、写真や絵を挿入して文章のイメージが膨らむよう工夫した。すなわち現代語訳である。
第1期の5冊は、周防大島の生活誌と、宮本の家族にふれたエセイを収録すると決めている。宮本が遺した膨大なエセイの中でも、ふるさと大島の今の子供たちに読んでほしい、美しい文章に特化した選書を編んで残したいと考えたからである。
本書(第2集)に収録した「私のふるさと」は、ふるさと大島の風光と暮し、集落の変遷を自身の子供時分に遡って情感豊かに描出したエセイで、宮本40歳の秋(1947年10月)に認められた。このエセイを最終章に収録した「宮本常一著作集21 庶民の発見」(未來社、1976年)の「はじめに」で、「私のふるさとをかたることによって、民俗事象がどんなに生活の中に存在し、また変貌していきつつあるかを見ていただきたいと思ってつけ加えた」と宮本は記す。
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