空をゆく鳥、雪がふり傘をさすあなた 心臓は風化しない
藪内亮輔久びさの第二歌集は恐ろしいほどの虚無と死を
孕んで差し出される。世界中に戦争の火種が見え隠れす
る今、歌は痛みであり、出血を伴うかなしみである
【収録歌より】
沁み込んだ――滴(しづく)が。甃(いし)に。手のひらに。―― 血液といふ出口なき川
名を持つてしまつた君が名を持たぬ花を掲げて その燃える赤
唇あまた滅びてのちに一度だけふれし夜雨に海がけぶれり
最初からこの世は地獄 あきらめよ びたびたと魚(いを)のやうに降る雨
のどぼねは焼き滅びをり花はなほ 夏に降り積むまぼろしの雪
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