著者の「松尾芭蕉は本当にすぐれた俳人だったのか」という素朴な疑問から本書は出発する。元禄時代にあまた輩出した俳人たちと芭蕉を比較し、芭蕉はやはり本当に傑出した俳人であったことを確信する。現代の俳句にいそしむ人たちにとって、何よりの手引きとなるのは、芭蕉の推敲の過程であろう。推敲のたびに発句は魅力をましていくことを著者はこの本で示してくれる。芭蕉をこよなく尊敬した蕪村は、俳句と絵画のとりあわせの妙を生かした作品を数多く残した。蕪村はストイックな芭蕉とは対照的に、芝居や酒席をおおいに楽しむ自在で洒脱な俳人であった。これもまた、俳人のひとつの生き方であることを読者は知ることになるであろう。
※本データはこの商品が発売された時点の情報です。