近年の社会・経済的な変化に伴い,人々の生活様式のニーズとして簡便化が大きなキーワードになっている.このような中で,加工食品や外食産業,コンビニに代表される中食の発達には著しいものがある.したがって,日本標準商品分類の調味料関連製品やその他の調味料およびスープに分類される調味料は,著しく発達し,変化し拡大している.
天然系調味料とは,農・水・畜産物および酵母を原料として抽出・濃縮してつくるエキス調味料と,大豆・小麦・その他の副生成物のたん白質を分解してつくる,たん白加水分解物調味料との,2つの系統の調味料に対して用いる業界用語である.一言でいえば,天然の食品素材を原料とした調味料ということになる.食品の表示においては天然・自然などの用語は,公正競争規約などに別途定められているので,それに準じて使用しなければならない.
このように,エキス調味料はいわゆる日本の“だし”,西欧の“ブイヨン”,“フォン”,“スープストック”,中華の“湯(たん)”に相当するもの,あるいはそれらの加工度を向上して,加工食品や外食産業などに使いやすくしたものといえる.一方のたん白加水分解物は,しょうゆやみそ,魚醤油のように,一般に安価な原料を使用して,たん白質を分解してアミノ酸を作り,使いやすくした調味料である.市販の加工食品の表示を見て頂ければおわかりのように,このようなエキスやたん白加水分解物は,ほとんどの食品に使用されている.
おいしい食物をつくるにはその風味が重要であり,調味料の役割は大きい.食品の風味に関与する成分の解明,うま味,コク,減塩調味に加えて風味と健康機能との関係など新しい研究も進展している.
一方,調味料として風味が優れたものを作り,保存性も良く,安心して安全に使用されるためには,原料の選択,抽出法,濃縮法,保存安定性の確保など製造技術面の役割が大きい.
著者は,民間会社でうま味調味料,たん白加水分解調味料,エキス調味料の研究,開発,製造に携わり,さらに関連する業界団体で経験した安全・安心の確保なども含めてまとめたのが本書である.
天然系調味料は,非常に広く食品業界に浸透しているため,調味料会社の方はもとより,食品に関与されている製造,販売,研究,給食関係,および大学で食品を専攻される方々の参考になれば幸いである.
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