山口青邨の百句 文体の多様さ、自在さ/岸本尚毅

著:岸本尚毅
出版社:ふらんす堂
発売日:2019年02月
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内容紹介
◆文体の多用さ、自在さ

紙燭の?天に向ひて梅白し

梅の花の頃の冷たい夜気が感じられる。静謐な感じの句だ。「紙燭の?天に向ひて」と「梅白し」は発想的には二句一章だが、句形は上五から下五まで一気呵成の印象がある。青邨の句は時として素っ気なく、それがまた潔い。
(本文より)


◆青邨の作風について山本健吉は「秋桜子・誓子ほど野心的な表現意欲もなく、新風を樹立するにも至らなかったが、どこか余技的な余裕があり、平明で、淡白な中に心がこもり、明るく健康で教養人的であるのが、彼ら(青邨と風生 引用者注)を『ホトトギス』の主流に位置せしめているのである。両者を比較すれば、風生のほうが俳句的ひねり0 0 0 が利いており、軽妙瀟洒繊細なのに対して、青邨は単純で一本調子で質実で感情の襞がおおまかである。風生が女性的なのに対して、青邨は男性的である。だが両者とも一種の近代的感覚を身につけ、社会人的・紳士的洗練を句の上に漂わせていることにおいて、古い俳諧者流と区別される」(『現代俳句』)と評した。「「単純で一本調子」と山本健吉は言うが、私は必ずしもそうは思わない。最晩年の句まで通読して強く感じるのは、むしろその文体の多様さ、自在さである。
(「青邨の句の文体について」)

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