

ハラスメントに気がつかない方が楽だという気持ちに、盲目的に支配されていないだろうか。
心理相談の実践に30年近く携わった経験と,心理学の専門的知識を背景に,相談やサポートに必要となる知識と技術について考える。加害と被害の二者関係に留めず,コミュニティ全体の問題として問いかけ,教職員や学生,そして,ハラスメント相談窓口として戸惑う相談員に向けて,日常的で身近な問題への取り組みへと誘う。
決して,本書は,揺るぎない倫理観をもって高みから読者を導こうとするわけではない。
大学コミュニティのあらゆるメンバーに向けて,読者とともに歩み考えていこうと,語りかける。
◆もくじ◆
まえがき
−1部 ハラスメントの理解−
1章 ハラスメントとは
(1)専門家に答えを出してもらうのではなく,自ら考える姿勢/(2)ハラスメントとは何か?/(3)ハラスメントのダメージ/(4)ハラスメント問題の複雑性/(5)本書の立場
2章 ハラスメントの分類
(1)セクシュアル・ハラスメント/(2)アカデミック・ハラスメント/(3)パワー・ハラスメント
3章 大学という場におけるハラスメント
(1)近年の大学の状況とハラスメント/(2)大学におけるハラスメントの実態/(3)大学人の欲望/(4)大学教員の学問的権威/(5)学生間のハラスメント/(6)教員間のハラスメント/(7)アカデミック・ハラスメントと研究上の不正
4章 ハラスメントについてのさらなる考察
(1)ハラスメントを根絶?/(2)性的欲求や性別の区別そのものは悪ではない/(3)加害者・被害者に個人的な特徴はあるのか?/(4)傍観者の有害性/(5)なぜ周囲は気づかないのか?/(6)ハラスメントのグレーゾーン/(7)教員と学生の恋愛/(8)ハラスメントの周辺問題/(9)コミュニティ基準/(10)ストレスという背景要因
−2部 ハラスメントの予防−
5章 予防のために
(1)ハラスメント研修の基本スタンス/(2)予防の最重要ターゲット:無関心な傍観者たち/(3)社会的な密室/(4)「ハラスメントをしない」という目標は逆効果/(5)肯定文で価値を記述する/(6)よい実践を讃える/(7)自分のこととして捉える/(8)ハラスメントに気づいたとき/(9)ハラスメントと厳しい指導
6章 権力を自覚し,使い方を考える
(1)スタンフォード監獄実験/(2)アブグレイブ刑務所/(3)普通の人が悪人にもヒーローにも傍観者にもなりうる
−3部 ハラスメントの相談−
7章 ハラスメント相談の基本
(1)相談の焦点/(2)相談者本人の側の問題/(3)ハラスメント相談ですること/(4)ハラスメント相談でしてはいけないこと/(5)ハラスメント相談それ自体の援助効果/(6)心理カウンセリングとハラスメント相談
8章 相談者の心理
(1)葛 藤/(2)ハラスメントについての社会的認識の求め/(3)恥辱感と抱え込み/(4)無力感・憤り・自責感/(5)PTSD…
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