行動インサイト(behavioural insights:BI)とは、意思決定、心理学、認知科学、神経科学、組織・集団行動をはじめとして、行動科学と社会科学から得られた教訓のことである。世界中の公共機関が、国民や企業の実際の行動とバイアスに関するエビデンスに基づき、よりよい公共政策を設計・実施するために、ますますBIを利用するようになっている。そうしたBIによるアプローチは、国民はこのように行動するはずであるという前提に基づくのではなく、エビデンスを主体にして、何が国民の意思決定を実際に促すのかを理解することに重点を置いている。そうすることで、真のニーズと行動を政策に反映させて効果と有効性を高めるのに役立つ。経済協力開発機構(OECD)は、公共政策におけるBIの活用を率先して研究・報告してきた。OECDは世界の行動政策立案者・実務者のコミュニティと連携して、BIの活用を支えるツールや手法、知識や基準の明確化と開発を行っている。本書は、そうした行動政策に関わるコミュニティから寄せられた、BIをより体系的かつ確実に適用するための指針を求める要請に応えるものである。そして、政策立案者と実務者に対し、現在ある他の行動科学のフレームワークに加えて、適用可能な一連のツールを提供する。本書は、行動(Behaviours)・分析(Analysis)・戦略(Strategies)・介入(Interventions)・変化(Change)(「BASIC」と略される)に着眼した手法によって、実務者と政策立案者に、政策問題を分析し、戦略を構築し、行動科学的に情報を得た介入を開発するための段階的なプロセスを提示する。
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