湯島天神の奇縁氷人石に尋ね人の紙を貼り、熱心に手を合わせる女がいた。その女の名はおつた。芸者上がりで三味線の師匠をしているおつたが貼った紙には、左眉の上に傷痕のある秀次郎という三十男の名が記されていた。そんな折、新堀川沿いの古寺で着流しの浪人の死体が見つかった。浪人が大金を持って死んでいたことを不審に思った臨時廻り同心の白縫半兵衛は、その死体の身許を探り始めるが…。「世の中には知らん顔をした方が良いこともあるさ」と嘯く半兵衛の人情裁きを描く、書き下ろし人気シリーズ第十一弾。
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