

1991年12月にソ連が崩壊して、すでに30年。本書は、当時の政権中枢や反対制派の人物多数にインタビューや取材を重ね、彼らの内面に「スターリニズム」がいかに深く根ざしていたかを探り、ソ連崩壊に至るまでの過程を追いかけた、記念碑的な作品だ。変革期には様々な「人間ドラマ」を見ることができる。物理学者サハロフに代表されるように、体制批判に向かう英雄的な人びと、時流に迎合し、反ユダヤ主義に走る数学者シャファレビッチのような人びと、現状に疑問を抱きつつも、体制にとどまり、前へ進めないゴルバチョフのような人びと…。本書のタイトルは、レーニンをレーニン廟に祭り上げるのではなく、レーニンを完全に葬り去り、批判の俎上に載せられるかどうかを意味し、それがロシアの真の再生の鍵を握ることを表わす。したがって、ゴルバチョフやその周辺の人びとは、やがて時代の潮流にのみこまれ、歴史に追い越されていくことになる。本書の優れている点は、全体主義国家の制度とイデオロギーの破綻を、広く深く観察していることだ。取材の射程は、サハリン島やシベリアの炭鉱の地下から、カフカス、中央アジアの集団農場、都市部の言論・文化界、共産党中央にまで及んでいる。そして、ソ連を支配していた共産党の独裁体制、党と国家の構成体が自壊していく軌跡を、臨場感たっぷりに描くことに成功している。
※本データはこの商品が発売された時点の情報です。
