人工臓器治療の落とし穴/日本人工臓器学会編集委員会/徳永滋彦/百瀬直樹

監修:日本人工臓器学会編集委員会 編集:徳永滋彦 編集:百瀬直樹
出版社:南江堂
発売日:2024年11月
キーワード:人工臓器治療の落とし穴日本人工臓器学会編集委員会徳永滋彦百瀬直樹 じんこうぞうきちりようのおとしあな ジンコウゾウキチリヨウノオトシアナ にほん/じんこう/ぞうき/がつ ニホン/ジンコウ/ゾウキ/ガツ
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内容紹介
人工臓器治療の現場で起きた(起こりえた)トラブル事例を約80例,出し惜しみせず掲載.人工心肺,ECMO,人工心臓,人工呼吸器,血液浄化装置,人工膵臓に関して,臨場感あふれるストーリーとともに,どのような状況でトラブルが起こるのか,どうしたら回避・対処できるのかをポイントを押さえ解説する.臨床工学技士,心臓血管外科医,ICUスタッフなどに必携の一冊.

【書評】 *抜粋・改編
本書は,『心臓血管外科手術の落とし穴』の人工臓器版として誕生した経緯がある.第I章に11項目の「人工心肺の落とし穴」,第II章に9項目の「PCPS/ECMOの落とし穴」,第III章に15項目の「人工心臓(LVAD)植込み手術の落とし穴」,第IV章に14項目の「人工心臓(LVAD)管理の落とし穴」,第V章に7項目の「人工呼吸器の落とし穴」,第VI章に9項目の「血液浄化治療の落とし穴」,最後の第VII章に6項目の「人工膵臓の落とし穴」が記載されている.一つひとつの事象における人工臓器治療の落とし穴についてかなり詳細に事例をあげ,その事例の分析を記載し,落とし穴の回避法・対処法にいたるまで丁寧に解説されている.
第I章の「人工心肺の落とし穴」では,臨床工学技師がおそらく遭遇する,もしくはしない,いやしたくないであろう人工心肺にまつわる落とし穴が記載されている.項目をあげると,血液回路の組み立て時のフィルターの上下逆接続,冷温水槽の水回路のつなぎ忘れ,それが外れて噴水,血液ポンプの操作画面のブラックアウト,ローラーポンプの不適切な圧閉度で逆流,静脈血貯血槽があふれそうになった,心内血貯血槽があふれたなどなど,かなり恐ろしい事例が列挙されており,若手のみといわず,臨床工学技師全般の方に読んでほしい内容となっている.第II章では「PCPS/ECMOの落とし穴」として,注目すべきは,「回路に吸い込まれる落とし穴」では,充?液バッグから空気が流入,深部静脈血栓が吸い込まれた,ガイドワイヤーが吸い込まれたなどの特異な落とし穴,またその他にも管理に伴う落とし穴が記載されている.(略)
落とし穴とは,字のごとく地面に穴を掘ってそれを隠蔽し,穴の上を通ろうとする動物を落とそうとするものである.臨床を行っていても必ず人工臓器の落とし穴に遭遇するものではなく,ひょんなことで迷い込み,その落とし穴に落ちてしまうものである.本書を読み込むことで,通常では経験しないような人工臓器の落とし穴事項を回避できることもあり,また落とし穴にたとえ落ちたとしても本書による仮想体験での対処法により,すみやかに対処できるバイブルになると思われる.序文の文末に,「本書が人工臓器に携わる皆さんの日々の臨床において,落とし穴を回避し足元を固めて確実な人工臓器治療を行うことができる一助とならんことを祈念して」と記載があるが,まさにその一翼を担う書となっていることを確信して,この書を薦める.

臨床雑誌外科87巻2号(2025年4月号)より転載
評者●六鹿雅登(名古屋大学心臓外科 教授)

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。