将来を嘱望された青年アドルフは、P伯爵の愛人エレノールに執拗に言い寄り、ついに彼女の心を勝ち取る。だが、密かな逢瀬を愉しむうちに、裕福な生活や子供たちを捨ててまでも一緒に暮らしたいと願うエレノールがだんだんと重荷となり、アドルフは自由を得ようと画策するが…。
近代フランス心理小説の最高傑作の一つであり、心理主義小説の先駆けとして知られる小説。将来を嘱望された青年アドルフは、年上の美しい婦人エレノールと恋におちる。エレノールはある伯爵と内縁関係にあり、子供までいるのだが若い青年の愛にすべてを投げ打ってしまう。そして男はやがて女を重荷に感じるようになるのだが、ずるずると関係を続けてしまい……。この作品の真骨頂はこの後のアドルフの心理描写にある。主人公アドルフはどのような悩みを抱え、どのようにそれを乗り越えようとするのか。読者は感情移入しながら読んでいくことになる。恋愛心理(恋した後の“苦悩”)の細密な分析描写に加え、心理が浮き彫りとなる会話を、細やかな深みのある訳文で再現する。
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