上州渋川村の百姓として育った茂平。北町奉行所同心・神岡冬右衛門の養嗣子となり、お役目を世襲して、武士としての月日が流れていた。だが、草木が萌え出る初夏になると血が騒ぐのだ。百姓の血が…。いやで逃げ出した田植えが気になり、かつて暮らした向島・小梅村へと足を向けた。剣の修業時代に知り合い、憎からず思っている百姓の娘・トキの田植え姿を見るためだった。しかし、小梅村で思わぬことに茂平は巻き込まれた。偏屈者と呼ばれるひとり暮らしの百姓が脇腹を刺され、住居が物色されていたのだ。だが男は、意外な申し出をしてくる…。書下ろし長篇人情時代小説。
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