石川島の人足寄場近くの海辺に、死体を乗せた小舟が打ち上げられた。小舟は盗まれたもので、南町奉行所隠密廻り同心・神谷善之助の手下・銀次の仲間の物だった。殺されていたのは、千住にある大店の番頭だった富蔵で、一年前に不祥事を起こして店を叩き出されていた。富蔵は博打で身を持ち崩し、博徒から十八両の借金があった。返済金絡みの出来事とみて、下手人捕縛に動き出した途端、富蔵と同じ手口で若い男が殺された。探索を撹乱させるのが目的か?それとも、続けて起きた殺しには繋がりがあるのか―。銀次を奔らせ、事件を追う善之助の周りで、ある男の輪郭が見えてくるが…。
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