

本書では,近年の計算機性能の著しい進展を背景とする乱流の計算科学の基礎について解説する。乱流は自然や科学技術のさまざまな問題だけでなく,日常生活でも随所に現れる現象である。置かれた条件によって乱流は千差万別の姿を見せるけれども,その背後には,共通の普遍的統計法則が隠されていると考えられる。一方,その強い非線形性と力学的自由度の巨大さのため,乱流の普遍的統計法則の解明や乱流予測などは困難であるとされてきた。しかしながら,計算科学とくに数値シミュレーションによる方法はその困難に立ち向かうための有力な術あるいは手がかりを与えつつある。
第1章で,乱流の特徴と流体運動を支配する流体力学の基礎法則について簡単に述べたあと,第2章で,その基礎法則に基づいて流体運動を解析するための数値計算の方法,とくに差分法とスペクトル法について解説する。第3章では,固定境界壁のない乱流,ある乱流,さらに重力やコリオリ力などの外力下にある乱流のうち,いくつかの基本的なものについて解説する。第4章では,乱流の持つ巨大な自由度を適切に縮約するための手法として有望視されている,ラージ・エディ・シミュレーションおよびウェーブレット解析手法について解説する。
本書は乱流の法則性の解明や数値解析に関心のある研究者,技術者に概観と展望を与える専門書として,また乱流に興味を持つ学生,異分野の研究者にとっての解説書となるように企図されたものである。
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