儒教に束縛され、理念で制御された漢字世界に生きる朝鮮王朝の女性にとって、男女の情の意味も含む“色”は、忌避し隠すべき対象であった。しかし東宮妃の自己語りである『ハンジュンロク』は、ハングルを用いて色を感覚の次元で表現してみせた。一方多彩な色の世界を描いた『源氏物語』では、色を観念的に捉える傾向がある。両国を代表する女性文学が正反対の志向をみせることに着目。日韓を横断し『源氏物語』を専門にする学者が、独自の視点を通して王朝文学に記された色彩の魅力を読み解く。
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