多くの企業でデジタル変革(DX)がレガシーシステム(古いアーキテクチャーの既存システム)によって妨げられている。この状況を本書は「ITロックイン」と呼ぶ。
このITロックインの問題を解決するには、レガシーシステムの運用改善や再構築、新しい考え方の経験と理解が求められる。そのために必要な技術知識を解説したのが本書である。
その技術とは「アジャイル」「クラウドとDevOps(デブオプス)」「マイクロサービス」「クラウドネイティブの発展」「プラットフォームエンジニアリング」だ。本書はそれぞれの章を立て、非ITの人材でも理解できるようかみ砕いて解説する。
これらの技術を「なぜ生まれ、どう活用され、逆にどのような問題があるのかを腹落ちするまで深く理解する」ことができるように、ストーリーとして著した。これが本書の最大の特徴である。
上記の技術は互いに深く関係しており、連鎖的に生まれた。それゆえ、技術が生まれた背景、開発者・提唱者の思想、活用が広がっていく経緯といった一連の流れを追うことで理解が深まる。この点で、単なるキーワード解説書とは一線を画す。
ストーリーとして著したと言っても、昔話ではない。技術が生まれたのは下記の通りで、いずれも2000年以降だ。
2001年…アジャイル
2006年…クラウド
2009年…DevOps
2014年…マイクロサービス
2017年…クラウドネイティブの発展
2021年…プラットフォームエンジニアリング
米Neflixと米Googleといった先駆的な企業やトップエンジニアが、直面した課題を解決するため、試行錯誤して生み出した。この経緯を踏まえることで、各技術を優れたものとして無批判に受け入れるのではなく、何に向き、逆に何に向かないのかまで理解できる。例えばアジャイルであれば、従来手法であるウオーターフォール開発を取り上げ、「ウオーターフォールが適しているのは、1年以上かかるような取り組みにおいて、リリース日と、求められる成果が明確である場合だ。税制などの法律に従った確定的な内容では計画主導が向いている」とする。
本書を読むことで、このようにうわべだけでない本質的な理解ができる。変革を進めるうえで必ず役に立つ一冊だ。
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