循環器ジャーナル Vol.73no.2(2025)

出版社:医学書院
発売日:2025年04月
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内容紹介
<企画者より>
1924年にアイントーベンが「心電計の発明」によりノーベル生理学・医学賞を受賞してから100年が経ちますが、心電図は変わらず臨床現場で使われ続けている検査であり、日常診療で避けて通ることのできない基本的検査ともいえます。しかし、心電図診断は必ずしも容易ではなく、臨床現場で診断に迷うことも多いのではないかと思います。症例や経験の蓄積が重要なのは当然ですが、心電図の理解をふまえた診断力を養うことが重要です。

また、心電図は非常に奥の深い検査でもあります。心電図は、時間と電位高、の要素からなる時系列データですが、われわれはこれを波形(画像)として認識し、P波、QRS波、T波といった波形の集合体を疾患と対応させてパターン認識する、という手法で理解してきました。しかし、これだけではわれわれはいまだに心電図の中にある膨大な情報の一部しか活用できていないように思います。フーリエ変換やウェーブレット変換に代表される時系列解析などは、新たな情報を引き出すための手段ですが、変換後の波形をどう解釈するか、大きなハードルがありました。近年の人工知能(AI)の発展は、通常の心電図波形や変換後波形のなかで、われわれが注目していなかった領域に大きな情報があることを示しており、あたかもわれわれに“新しい目”を提供しているように思います。この新しい視点と、発生学・解剖学・基礎電気生理学の知識を統合して心電図を理解することで、心電図判読に大きなブレイクスルーが得られると期待しています。

本企画のテーマは「心電図ブレイクスルー」ですが、大きく3つのブレイクスルーについて、エキスパートの先生方に執筆していただきました。

第一はAIとウェアラブルデバイスに代表されるテクノロジーの進歩を用いた“心電図活用のブレイクスルー”です。AIの活用は、心電図自動診断や疾患有病予測などに応用できるほか、前述のように心電図を考えるための新たな見方を提供してくれます。一方、安易なAIの活用には危険性もあり、どのように活用するかも重要です。ウェアラブルデバイスを活用した心電図記録も、AIと組み合わせた形などで広く活用されつつありますが、こちらもその利点と限界を解説してもらいました。

第二は、発生学・小児から成人への変化・細胞レベルから心臓興奮を再現するシミュレーション・心電図の時間変動性、などの視点から心電図を考え直す “心電図理解のブレイクスルー”です。背景にある分子レベルからの理解は、心電図の考え方を考え直す多くのヒントを授けてくれると考えます。

第三は、心電図診断を臨床に役立てるための“心電図診断力のブレイクスルー”です。各病態における心電図波形を、その成り立ちの理解から解説していただきました。心電図理解の項と合わせて読んでいただくことで、さらに理解が深まると期待しています。

この企画が読者の先生方の心電図の理解と日常診療に役立つことを願っております。

※本データはこの商品が発売された時点の情報です。