「黒い皮膚」の精神科医が肉迫した差別の構造、その葛藤の軌跡とは。今こそ必読の書。
フランス領カリブ海マルティニークで生まれたフランツ・ファノン(1925-1961)は、アフリカから連れてこられた奴隷の子孫である「黒人」として、さまざまな差別を経験する。人間の自由と平等を信じ、戦時中は自由フランス軍へ志願し、戦後は本国フランスで学んで精神科医となった彼は、「白人」によって「黒人」がつねに劣った存在としてまなざされ続ける現実に激しい怒りと疎外感を覚える……。
精神科医としての医学的知見を動員して人間を観察し、文学作品に描かれた「白人コンプレックス」にも考察を伸ばし、人間の心理に深く内面化された差別の構造に迫ろうとしたファノン。彼の葛藤と思想的足跡が綴られた本書は、いま私たちに何を気づかせてくれるのか。植民地主義がいまだ影を落とし、同胞が差別しあう現代において、人間が抑圧から「解放」されるには、いかなる思索や視点が必要なのか。
現代の文学作品に投影された差別の実状や、ファノンが生きた時代の歴史的背景もふまえつつ、フランスのカリブ海文学に造詣の深い作家・小野正嗣氏が、「ブラック・ライヴズ・マター」を考えるうえでも必読の本書に込められたメッセージを読み解く。
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