官僚がつくる「唱歌」に猛反発した北原白秋は「童謡」を創生し、震災後の社会に受け入れられて国民詩人の地位を確立する。自治への欲求を高めて大正デモクラシーを担った民衆は、詩人に作詞を依頼して「わが町」を歌いあげる民謡に熱狂した。拡大の一途をたどりつつ国民に奉仕を求める国家、みずから進んで協力する人々、その心情を先取りする詩人、三者は手を取りあうようにして戦時体制を築いてゆく。“抒情”から“翼賛”へと向かった心情の回路を明らかにし、戦前・戦時・戦後そして現在の一貫性をえぐり出す瞠目の書。
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