「高い所は苦手?」「じゃあ…じゃあ、奥様にも見えているんですね。私の頭が、壊れたわけではなくて」女が声を上げて笑う。それを聞いても、トリシャはまだ、女がこの出来事を引き起こしているのだとは思いいたらなかった。丘を越え、手前にある木立の上を飛びすぎた馬は、街に向かってゆるやかに降下しはじめた。「宿屋はどこにあるのかしら?」「奥様、これは一体…」女は軽く首をかしげると、にっこり笑ってトリシャを見下ろした。「その奥様というのはよして。私はサンディア・ウォレス。見ての通りの魔女よ」魔女ウォレスに弟子入りしたトリシャは、忽然と姿を消した師匠を追い、旅に出た。時を同じくして、辺境では魔導士による殺戮事件が起こり―!?第1回C・NOVELS大賞受賞第一作堂々刊行。
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