毎朝六時半のラジオ体操にはじまり、「いただきます」の声を合図にほかほかの朝食が食堂のテーブルに並ぶ。京都市左京区の学生寮で四年間なじんだ生活は、山根が大学院生になった春からもつづいている。ウマがあう生物学科の安藤や数学科の龍彦らと同様、工業化学科の山根もまた趣味と研究を偏愛しすぎる毎日で、当然、異性のことなんて頭の片隅にもなかったのだが―。葵祭や五山送り火、京都ならではの風物を背景に、不器用な理系男子のみずみずしい初恋のときめきを、あたたかく包みこむ純情恋愛長編小説。
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