近年やってきた空前の“地獄”ブーム。しかし、「地獄はどこにある?」「閻魔王は何者か?」―この問いにやすやすと答えられる日本人は、そう多くないだろう。私たちの祖先は、仏教とともに「地獄」の存在を知って以降、常に地獄を身近に感じながら生きてきた。ある時代の人々は死後の地獄堕ちを心底怖れ、時代が下ればパロディのネタにした人々もいた。地獄堕ちを免れるためのガイドブックや地獄行き体験のエピソードを記した紀行文、文字が読めずともひと目でわかる鮮やかな地獄絵―地獄の様子はさまざまな説話や絵図に写し取られ、残されてきた。本書ではぜひ、これら古典文学や絵画をひもときながら“三途の川”までの道のりを同行し、“閻魔王”を紹介する地獄巡りにご案内したい。そこには日本人が辿ってきた時代の空気、世相、死生観がありありと映し出されている―。
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