御製、会見、側近の日記・回顧録など多岐にわたる貴重な資料をもとに、昭和天皇の87年の生涯を辿る。下巻は、最後の行幸となった北海道行幸から、半世紀ぶりのヨーロッパ再訪、沖縄返還への思い、1975年の初のアメリカ訪問を経て、生物学者としての関心、崩御までを詳述する。戦後、日本が経済大国となっていき、戦争の影が社会から少しずつ消えていっても、戦争は天皇の心中には重い傷となって残り続けた。変わりゆく時代のなかで、理想の天皇とはいかなる存在なのか、新憲法の枠内で「象徴天皇」としてどうあるべきかを模索し、平和を祈り、文化的伝統を守り、国民とともにあり続けた後半生。人類史が体験したすべてが詰まった「昭和」という時代を、天皇の生涯から問い直す労作。
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