福祉イノベーションへのひとつの提言 都市のデジタルツイン実装から/永田隆二

本書は、福祉イノベーションへのひとつの提言を記している。具体的には、政府の主導する3D都市モデルのオープンデータを活用したイノベーションの福祉領域での応用である。ただし、そのオープンデータを活用し、筆者自身がイノベーションを開発した、というものではない。そのオープンデータを活用し、社会実装に向けたさまざまな実証実験がおこなわれているが、それらの実証実験レポートを質的に分析し、これまでのイノベーションが、狭義的な社会福祉の実践や地域共生社会の実現にも応用可能であるという提言である。それは、K.クリッペンドルフらの内容分析の方法に依拠しながら、ルートコーズ分析のフレームワークも付加した分析枠組みによる分析から導き出している。その分析結果は国際ジャーナルに掲載されているが、本書は、研究当事者である筆者が、その学術論文を邦訳し、それに大幅な加筆をしたものである。
本書の冒頭において、政府の推し進める「地域共生社会」構想や「デジタルツイン」構想の状況などに触れ、中盤の研究方法の提示では質的内容分析の方法を詳細に、かつ、とても分かりやすく伝え、その後の分析結果と考察につなげている。都市のデジタルツインの開発にかかわる自治体や企業、技術者らでも福祉領域での応用をイメージしやすく伝えている。社会科学を学ぶ学生等においても理解しやすい内容となっており、また、質的研究に取り組もうとするうえで、ひとつの方法論として参考になる図書である。

■□ 著者のプロフィール ――――――――――――――□■
永田隆二(ながた りゅうじ)
田園調布学園大学人間福祉学部 准教授。
東京福祉大学社会福祉学部卒業,東京福祉大学大学院社会福祉学研究科博士前期課程修了,明治学院大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学,慶應義塾大学法学部卒業。介護老人保健施設相談員,専門学校教員を経て,2025年4月より現職。主な研究テーマは,福祉政策,高齢者福祉,国際福祉。
主要著書 : 『福祉国家見直し論と自民党政治 : 地域共生社会への起点』(単著,翔雲社,2025)。