錯雑 アズサの歌が流れて/椎葉 乙虫

2008年、渋谷で大学院生の佐伯が泥酔し転倒死した。それを不審に感じ調べていた刑事が、9ヶ月後に同じ渋谷で酒酔いの上、事故死する。

4年後の2012年、福岡で会社社長の死体が無惨な状態で発見された。難解と思われた捜査は3ヶ月後、精神異常者の投身自殺で幕を下ろす。だが、二人の息子たちは事件の解決に疑問を持ち、真相を究明するために立ち上がった。

一方、渋谷で事故死した刑事の甥であり、自身も刑事の慎吾は、叔父の残した手帳から疑問の解明を開始し、美貌の若手ジャズ歌手アズサに行き着く。アズサの周囲を取り巻く男たちに不審を持ち照準を合わせるものの、肝心の彼女自身が謎の多い存在だった。女系家族に育ったアズサと、取り巻きの一人若手の勤務医靖生との関係。アズサのファンである医薬品会社の嘉和の存在。

そしてその年の10月、福岡事件の解明に関わっていた定岡が東京で襲われた。さらに捜査に加わる慎吾までが襲撃され、事件は複雑な絡み合いを見せる。闇で笑みをたたえる恐ろしい犯人とは……。
椎葉 乙虫(しいば・おとむ)
1942年満州に生まれ、横浜で少年期を過ごす。
その後、栃木、埼玉、大阪を点々とし、現在は伊豆に在住。
2004年に創作ミステリーを描き始める。
著書:『短編ミステリー集 冬隣』(2013年、青山ライフ出版)
『絡みつく疑惑』(2014年、青山ライフ出版)
『十月の悲雨』(2016年、ブックウェイ)