模倣の時代 上 三省堂書店オンデマンド
出版社:仮説社
著者名:板倉聖宣
明治以後、日本は欧米の文化を模倣することに奮闘してきた。しかし、幕末から深刻な社会問題となった米食地帯固有の奇病「脚気」についてはお手本がなかった。その予防治療法だけは日本人が自ら創造性を発揮して解決しなければならない大問題であったのだ。
徳川13代将軍も14代将軍も和宮も脚気で病没。さらに近代化の波とともに、脚気は学生と軍隊の間で大流行しはじめ、とくに軍医たちを悩ませることになった。
しかし、原理はわからなくても治療はできる。自らも患者となった明治天皇は洋方医の処方を振り切って麦飯で脚気を克服し、軍隊でも高木謙寛や堀内利国の努力によって食事の改革が行われ、一時は脚気の撲滅も間近とさえ思われた。
しかし、これは新しい戦いの開幕にすぎなかった。
ドイツ帰りの軍医・森林太郎(森鴎外)を筆頭とする東大医学部系の医学者たちが、麦飯派に対して大反撃を開始したのである。
創造性とは何か。
「小説よりも奇」なる歴史の真相は,まさに社会組織の問題であることを凄まじい迫力で示す。
★★ もくじ ★★
事のおこり 新しい時代の開幕と脚気問題
明治維新と医学の西洋化
第一部 天皇の脚気と,脚気病院における漢洋の脚気相撲
遠田澄庵の野望か,西洋医たちの陰謀か
第二部 高木謙寛の兵食改善による脚気撲滅作戦
陸軍と東大の脚気論と緒方正規の脚気菌発見
第三部 麦飯による脚気絶滅作戦の成功と軍医本部・東大医学部の対応
〈論より証拠〉と〈証拠より論〉の争い