心臓の風化 歌集 / 藪内亮輔

空をゆく鳥、雪がふり傘をさすあなた 心臓は風化しない<br /><br />藪内亮輔久びさの第二歌集は恐ろしいほどの虚無と死を<br />孕んで差し出される。世界中に戦争の火種が見え隠れす<br />る今、歌は痛みであり、出血を伴うかなしみである<br /><br /><br />【収録歌より】<br />沁み込んだ――滴(しづく)が。甃(いし)に。手のひらに。―― 血液といふ出口なき川<br />名を持つてしまつた君が名を持たぬ花を掲げて その燃える赤<br />唇あまた滅びてのちに一度だけふれし夜雨に海がけぶれり<br />最初からこの世は地獄 あきらめよ びたびたと魚(いを)のやうに降る雨<br />のどぼねは焼き滅びをり花はなほ 夏に降り積むまぼろしの雪<br>藪内亮輔
書肆 侃侃房
2024年08月
シンゾウ ノ フウカ
ヤブウチ リヨウスケ
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