遠くの敵や硝子を 歌集 / 服部 真里子 著
夜をください そうでなければ永遠に冷たい洗濯物をください<br /><br />短歌はわたしではなく世界を震わせるのか。<br />この歌集を読んで、初めてそう思った。<br />世界が震え、震える世界の中にいるわたしが共鳴する。<br />そうか、そうだったんだ。<br />――金原瑞人<br /><br /> <br /><br />【五首選】<br /><br />わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠(かわせみ)<br /><br />灯のもとにひらく昼顔おなじ歌を恍惚としてまた繰りかえす<br /><br />水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水<br /><br />つばさの端のかすめるような口づけが冬の私を名づけて去った<br /><br />神を信じずましてあなたを信じずにいくらでも雪を殺せる右手<br>服部 真里子 著
書肆 侃侃房
2018年10月
トオク ノ テキ ヤ ガラス オ
ハツトリ マリコ
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