オスマン帝国 / エテム・エルデム

これまでの衰退論を問い直し、制度と統治構造の変遷を中心に、オスマン帝国成立から衰退まで600年の歴史を辿る。制度で読み解く帝国史<br><br>オスマン帝国は十四世紀初めにアナトリア辺境に現れ、一四五三年のコンスタンチノープル征服を契機に体制を確立した。スルタンを頂点とする統治は、イスラム法と世俗法を並立させ、奴隷出身の官僚や軍人を登用し、宗教的少数派を共同体として包み込むなど、多様な人々と文化を制度に組み込んだ。<br>本書は従来の概説とは異なり、国家体制・社会・経済に踏み込み、硬直化や経済の特質、民族・宗教の多様性と文化の広がり、十九世紀の社会変容に光を当てる。さらにヨーロッパ史と一体的に描き出し、「似て非なる」発展の姿を示すことで、単純な衰退論やヨーロッパ中心の見方、ナショナリズムによる解釈を退ける。一九八〇年代以降の史料公開やデジタル化による研究の進展を背景に、オスマン帝国史の新しい姿と今後の可能性を提示する意欲的な一冊である。<br>エテム・エルデム
白水社
2025年10月
オスマンテイコク
エテムエルデム
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