日本の近代猪瀬直樹著作集 12 / 猪瀬直樹/著
幕末、黒船の来航で近代を迎えた日本は、仕掛けられなければやられるという強迫観念の中、戦争に明け暮れることになった。そうした中で編まれた数々の未来戦記は、日米関係の裏面史であり、日本人の精神史である。日本人は外圧(ガイアツ)の中で何を考えてきたか <BR><BR> 日露戦争の勝利は日米開戦の序章でもあった。太平洋を挟んでの対抗意識が芽生え、両国で数々の「日米未来戦記」が発表されている。現実的な戦力分析によるシミュレーション、自国の堕落を憂いながら奮起を促す精神論からSF的発想のドラマティックなものまで、日本人の精神に多大な影響を与えている。中でもヨーロッパまで出向き、第一次世界大戦の戦禍を目の当たりにした水野広徳の『次の一戦』は、きわめて的確な内容で、開戦の無謀さを警告するものであったが、開戦=勝利への期待から、重視されなかった。軍部の独走だけがクローズアップされるが、国民の間にこそ、戦争を望む気運があったのではとの示唆は、日本人の精神史を辿る上でも興味深い。<br>