猫に満ちる日 / 稲葉真弓

二十年近く共に暮らした死の近い猫と冬の海へ赴く。猫は残された僅かな力で岩場を自らの縄張りと主張する――生命の根源を問う連作。出会ったころは掌に載るほど小さかった子猫は、二十年近い歳月を経て死が近い。老いと病で苦しむ猫を懸命に介護する「私」。<br>猫との日々を思い、係累や友人の死に様が脳裏をよぎることもある。夫と別れ、懸命に仕事をしながら住処を転々と移っても猫は一緒だった。<br>猫と暮らしつづけるため、東京中を歩き回って見つけた都心に近いマンションの一室を購入して数年後、猫の老いが始まっていた。<br>檻のなかに籠もるような「私」と猫の住む部屋に男友達が訪ねてくることもあったが、やがて離れていった。「私」はいつしか猫を殺してしまいたいほどの愛着を抱いていた。<br>休暇を取り、猫と冬の海に赴いた「私」。猫はキャリーバッグから這い出て、残りすくない生命力をふりしぼって岩場でマーキングをする。「私」は自分が大地の一部になったような快感に浸る――。<br>生命のリアルと根源をリリカルに描く傑作連作小説。<br><br>稲葉真弓
講談社
2026年01月
ネコニミチルヒ
イナバマユミ
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