各務原・名古屋・国立 / 小島信夫

過去の記憶と現在の困難な日常についてユーモアとペーソスを織り交ぜて語りつづける老小説家。思わず惹きつけられてしまう作品世界。老小説家の父親の出生地、岐阜県各務原市での講演という体で小説は書き始められる。その講演では岐阜近辺出身の文人が次々に召喚され、文化的磁場としての岐阜について語られるかと思いきや、認知症が進行していく妻とのやり取りの場面が挿入される。老小説家が関心を持って接してきた遠い過去からごく最近までの文学者たちの言葉と、日常生活を営むことが困難になりつつある妻の言葉が折り重なるように記されつづけたその奥からぼんやりと見えてくるのは、齢八十代半ばに至り健康体とはいえない老小説家が、どうしようもなく疲労しつつも生きて書くことの闘いをやめようとしない姿である。<br>小島信夫
講談社
2022年12月
カカミガハラ ナゴヤ クニタチ
コジマ ノブオ
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