


著者名:
柿嶌眞 徳増征二 出版社名:
共立出版
菌類という生物群は自然生態系の中で重要な役割を負っているばかりではなく,われわれの生活にも深く関わっていて,この生物群なしに豊かな生活環境の維持やその存続は不可能といってもよい。それにも関わらず,その実体は微細でわれわれの目では認識できないため,きのこ類などを除き,自然界における生態や生き様はいまだ多くの謎に包まれている。
しかしながら最近の生物学の急速な進展は菌類の系統や難しかった生態の解明に革命的な進歩をもたらし,従来の菌類の概念とはまったく異なる様々な知見を明らかにしてきた。本書では最近の研究成果などを基盤に,この生物群の特徴を分かり易く述べるとともに,腐生,寄生,共生を通して他の生物群とどのように関わって生活を営んでいるかを紹介する。
また,人類が菌類とどのように関わり,利用しているか解説した。本書を読んでいただければ,菌類が系統的にも生態的にもきわめて多様で,また他の生物との間に巧妙な関係を保ち,したたかな生き方をしているのが理解いただけると考える。また菌類は動物や植物などとはまったく異なる生存戦略で変幻自在に生きているすぐれた能力を持った生物群であることも理解いただけるものと考える。そして,このような菌類に対して,われわれはどのように向き合えばよいのかを改めて考えていただければ幸いである。菌類を敵とするか味方とするかは,われわれの菌類に対する理解と態度によって決まる。菌類とうまくつき合うことができなければ,いつか人類は菌類に滅ぼされてしまうかも知れない。
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