


著者名:
木原伸浩 出版社名:
共立出版シリーズ名等:
化学の要点シリーズ 23
超分子とは,複数の分子が協同して働き,単独の分子では実現できないような機能や反応性を獲得した状態である。生物のような複雑な分子システムは,フラスコの中の単独の分子とは質的に異なる振る舞いをするが,その違いをもたらすのが分子同士の協同効果であり,それを明らかにするのが超分子化学である。超分子化学の対象は必ずしも生体分子ではないが,「生物」という分子システムは常に超分子化学のお手本となっている。
以上のような超分子化学の位置付けを背景に本書は書かれている。まず,生体の分子システムを例にとって,超分子化学の位置付けを行なった後,分子の協同効果の源泉である,分子間相互作用について解説した。さらに,超分子化学の誕生のきっかけとなったクラウンエーテルによる分子認識,疎水相互作用および水素結合を利用した分子認識系について解説した。さらに,様々な分子協調システムについて解説し,超分子化学を理解する上で重要な概念について述べた。いずれも豊富な実例が挙げられており,複雑な概念も容易に理解できるように配慮されている。
本書の特徴の1つは,超分子化学のトピックスを扱った多数のコラムにある。筆者は超分子の概念を提出したLehnの孫弟子にあたり,1988年のノーベル賞受賞を目撃している。本書は,Lehnの弟子の1人Sauvageのノーベル賞受賞の年に執筆されており,臨場感にあふれたコラムは読者の超分子への理解を助けるであろう。
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