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医学書院
過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis;HP)は、1932年にCampbellらによって「農夫肺」として初めて報告され、症例の蓄積とともに、次第に免疫学的な機序で発症するという疾患概念が確立されてきた。その後近年に至るまでその診断は各主治医の判断にゆだねられ標準化されなかったが、2020年に米国胸部学会(ATS)より初めてHPの国際ガイドラインが発表され、2022年には日本でもこれに準拠した診療指針が策定された。これにより、間質性肺炎を安易に特発性とせず、HPを適切に診断することの重要性が一層強調されることとなった。
本特集「今こそ知りたい! 過敏性肺炎の“勘どころ”」では、診断や治療の最前線で押さえておきたい重要なポイントを、最新の知見に基づいて整理した。特に、呼吸器内科医、放射線科医、病理医などによる多職種合議(multidisciplinary discussion;MDD)の重要性が広く認識されるなか、その標準化や方法論には課題が残されている。本特集の第I章では、経験豊富な専門家たちが、MDDの意義や実践方法について症例を交えて議論し、診断から治療の検討までの流れを包括的に紹介する。
続いて、日常診療でよく遭遇する2つのClinical QuestionsをPro & Con形式で取り上げ、治療薬の選択や免疫学的検査の有用性について、具体例を交えながら深掘りした。抗炎症薬と抗線維化薬の使い分けや、抗原回避検査の有用性とその限界を正確に理解することが、HPの効果的な治療に繋がる。
さらに、疫学、診断・検査、予後および合併症に関する7つのテーマを掘り下げた。この10年でHPに対する関心は急速に高まったが、HPの発症が増加しているかどうか、様々な疫学情報がどのように役立つのか考察していただいた。診断においては、国際ガイドラインには掲載されていない、国内特有の原因抗原や日常的に測定されるバイオマーカー(KL-6やSP-Dなど)の有用性を加えた。原因抗原の同定は診断・治療・予後において極めて重要であるが、具体的にどのように抗原を同定するべきか、曝露評価表を用いた実践的なアプローチを掲示した。画像所見についても、診療指針における解釈を概説し、過敏性肺炎を鑑別する際に特に注目すべき所見について放射線科医の見解を取り上げた。また、気管支肺胞洗浄液の所見については、リンパ球分画に加え、形態学的な評価の重要性を記載していただいた。さらに、クライオバイオプシーと外科的肺生検という検査手法の観点から、HP診断における適切な病理検査の選択肢について重要なポイントを提示していただいた。
特集の最後では、過敏性肺炎の原因抗原別に典型的な症例を取り上げ、画像や肺機能検査データを交えながら解説していただいた。日常診療における診断・治療の最前線で「今こそ知りたい」重要なポイントを、この特集を通じて掴んでいただければ幸いである。
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